岐路に立つ40代以上サラリーマンが取るべき選択肢について考える

今、40代以上のサラリーマンの中には、人生の岐路に立っている方も多いのではないかと思います。

ジョブ型雇用の導入、AI化による人員削減、インフレによる実質賃金の低迷により、けっしてサラリーマンでいることが安泰とはいえない時代になってきています。

加えて、人生100年時代となって、定年後の働く期間を延ばさなくてはなりません。

退職金や年金だけでは不安ですし、定年後の再雇用では給与が大きく下がることも想定されます。

このまま、今の会社で働き続けることが良いことなのだろうかと迷っている方も多いのではないでしょうか。

しかし、日々の業務に追われて、そうした将来のことを考える余裕もなく、ズルズルと現状のままになっている場合も多いでしょう。

4年前までの私もその一人でした。

現状の居心地は良くないものの、すぐに対応しなければならないわけではないと思い、行動に移すことができずにいるのではないでしょうか。

しかし、こうした場合、そのままでいると気づいたら大変なことになっていたということもあり得ます。

よくある例えですが、適温だと思ってずっと湯につかっていたら、ゆでガエルになってしまっていたということは避けなければなりません。

現状に満足することなく、将来を見据えて対応を考えて、行動していきたいところです。

40代以上のサラリーマンが取り得る選択肢としては以下の三つになると思います。

  1. 現状のまま会社に残る
  2. 専門性を身に付けて転職する
  3. ライフワークとなる副業を始めて独立・起業の準備をする

今回は、この三つの選択肢のそれぞれを取った場合に、どのようなことが考えられるかを書いてみました。

家族構成や置かれている環境により異なると思いますが、悩める40代以上のサラリーマンの方にとって、参考となる気づきがあれば幸いです。

➊現状のまま会社に残る

現状のまま会社に残った場合に、今、起きている環境変化によって将来のリスクとなるかもしれないことを列挙します。

環境変化にもかかわらず、退職金をあてにして定年まで待って、老後の人生に備えることは、決して安定した生き方になるとは限りません。

ジョブ型雇用の導入

「ジョブ型雇用」とは、その職務に適したスキルや経験を持った人を採用する雇用方法のことを言います。

評価や賃金もその職務に応じたものになっていきます。

これまで日本企業では、長期雇用を前提に、複数の職種を経験させて、ゼネラリストとして育てていく「メンバーシップ型雇用」が主流でした。

AI化や国際競争の激化によって、欧米で主流の「ジョブ型雇用」へのシフトが進んでいます。

日立製作所は2024年度までに、職務内容に応じて人材を起用する「ジョブ型雇用」を全グループ会社に広げることを発表しました。

国内外の37万人に同じ雇用制度を適用し、海外子会社から優秀な人材を抜てきしやすくするとのことです。

三菱ケミカルは、「ジョブ型雇用」を段階的に導入するため主要ポストを公募制にしました。

富士通は、「ジョブ型雇用」導入に合わせ、2020年以降、段階的に働き手を職責に応じて評価する新たな人事制度を導入しています。

このように、主要な日本企業で徐々に「ジョブ型雇用」の導入が進んでいます。

2023年1月5日 日本経済新聞

現状では、試行錯誤しながらという形になっていますが、今後、ますますこの流れは加速するでしょう。

この「ジョブ型雇用」が進むと、専門的な人材を外部から採用し、人材の流動化が活発になることが想定されます。

企業は、国際競争力をつけるために、より高い専門性のある人材を外部から補強していく人事戦略に舵を切るケースが今後ますます増えてくるでしょう。

そうなると、社内での競争がますます激しくなり、専門性の高いスキルを持たない社員の居場所は少なくなってくるかもしれません。

これまで、転勤を繰り返し、ゼネラリストとして育てられてきたのに、急に専門性と言われても困ってしまうという人も多いのではないでしょうか。

そうした中で、社内での競争も激しくなり、より高い専門性とハイパフォーマンスを求められるようになりますので、段々と苦しい立場になっていくことも想定しておいた方が良いでしょう。

AI化による人員削減の波

さらにAI化によって、人間ができる仕事は少なくなっていくことが想定されます。

あるいは、人間が行う仕事は、これまでのものとは全く異なるものに置き換わっていくということかもしれません。

今は、まさに過渡期であり、さまざまな業務をシステム化して効率化を図っている段階だと思います。

そのシステム開発に、人手が要りますので、今はどこの起業も人手不足という状態であるように感じます。

これから、こうしたシステム化が一層進んでいくと、人手不足が解消され、今度は過剰な人員は削減されていくというステージに移っていくことが想定されます。

そうなると、より専門的なスキルがないと会社の中では厳しい立場になっていくということになります。

あるいは、AI化によって新たに必要となった人間がやらなくてはならない仕事を一から覚えていかないといけない立場になることも考えられます。

インフレによる実質賃金の低迷

さらに、今まさに皆さん実感していることだと思いますが、物価の上昇によって、生活が苦しくなっています。

物価が上昇する一方で、給与はほとんど上がりませんので、物価上昇分を考慮した実質的な賃金は下がっているというのが、多くの日本サラリーマンの実態です。

今後も、円安が進めば物価は上がり続ける可能性があります。

一方で、首相が経済界に賃上げを要請していますが、企業も国際競争の中で厳しい状況に置かれていますので、賃金を上げることはそう簡単ではないでしょう。

賃金が上がらない中で、現状のサラリーマンの給与だけに頼ることはリスクがあると言わざるを得ません。

再雇用後の給料の減少

こうした厳しい環境下でも、定年まで勤め続けて、退職金をもらえば、年金と合わせて何とか老後も安泰だという考えもあるかもしれません。

しかし、人生100年時代の到来で老後の時間が長くなっています。

長い老後の生活コストを賄うためには、退職金と年金だけでは不安です。

退職金も年金も、もらえなくなるということはないでしょうが、大きな期待はできないでしょう。

そんな状況の中、2025年4月から65歳までの雇用確保が義務化されます。

これで、長期の雇用が確保されるので安心ではないかと思われる方も多いかもしれません。

こうして幸福感の高い人生にしていくことが、ライフシフトの本質ではないかと考えています。

しかし、65歳まで義務化されるのは雇用確保であって、定年を65歳にすることではない点に注意が必要です。

雇用確保は、①定年の引き上げ、②継続雇用制度の導入、③定年の定めの廃止のいずれかを導入することが求められています。

この3種の制度の中で導入率が圧倒的に高いのが、継続雇用制度で、8割の企業がこの制度を導入しています。

更に、この継続雇用の内、一度退職した社員を再雇用することが認められいます。

ほとんどの企業が60歳定年のまま、定年再雇用により65歳までの雇用を確保するものと思われます。

こうした実態のため、再雇用される場合の給与は大幅にダウンすることになります。

定年時給与を100とした場合、7割以下に下がる企業が全体の約60%を占めます。1,000人以上の企業では5割以下となる企業が約37%となります。

従って、雇用期間は長期化しても、給与は大幅に下がることが想定されます。

国際競争の中、日本企業の置かれる環境はますます厳しくなっていきますので、もしかしたら半減どころかもっと下がるかもしれません。

定年まで、継続して働き続けても、定年後には給与が大きく下がったまま継続雇用されることが幸せかどうかは考えた方が良いでしょう。

➋専門性を身に付けて転職する

現状のまま会社に残っていると、ゆでガエルになってしまうと考えた場合に、まず真っ先に対応策として思い浮かぶのが、転職して給料を上げるというものです。

40代以上の転職市場も、一昔前に比べるとかなり活性化しています。

周囲でも、40代になってから、転職している人も多くいることと思います。

しかし、40代以上での転職には高い専門性が求められます。

転職後は、高い専門性と経験値を買われて雇われる形になりますので、相当のハイパフォーマンスが求められます。

今までよりも高い給与条件での転職であれば尚更です。

これから体力は落ちていき、30代のようなパワーはなくなってきます。

そんな中、ハイパフォーマンスを出す働き方を求められることになり、肉体的にも精神的にもハードになることが想定されます。

更に、転職をしたとしても、定年が60歳であることに変わりはありませんので、定年後の再雇用問題は生じます。

転職した場合は、退職金もほとんど見込めなくなりますので、この点も良く考えた方が良いでしょう。

また、雇用形態は現職と同様にサラリーマンであることには変わりません。

上司やマネジメントと考え方が合わないといったことも考えられますし、給与も好条件で転職したとしてもそこから更にアップしていくことは難しいでしょう。

40代以上の転職は、このようにハードワークや会社との相性などのリスクを背負う割に、収入のアップサイドは限られており、リスクとリターンが見合うかどうかはよく考るべきでしょう。

大変な思いをして転職しても、現状とそれほど変わらないということがあり得ます。

➌ライフワークとなる副業を始めて起業の準備をする

三つ目の選択肢として、今の会社を辞めずに起業の準備をするという道があります。

起業をすると当初は収入が全くなくなる事もあり得ますので、準備不足のままいきなり起業をすることはハードルが高いと思います。

従って、安定したサラリーを確保しながら、副業としてビジネスを始めて、起業の準備を進めていくというのがリスクの少ないやり方です。

副業として、育てた個人ビジネスで起業して、長い老後をその個人ビジネスをライフワークとして生きていくことになります。

定年後、人生100年時代を生きるにあたって働かなければならない時間は長くなります。

そうした将来も見越して、今からライフワークとなるべき個人ビジネスをつくっていくのです。

好きなことや得意なことを副業にして、稼げるようになったら、サラリーマンからフリーランスとして起業していく。

その個人ビジネスは、もともと得意なことで始めていますから、今後の人生のライフワークにしていくことで、長く働くことができて、幸福度も上がっていくのではないかと思います。

まとめ

私たちは、健康寿命の長期化、テクノロジーの進化によって、これまでの3ステージ(学習期、就業期、引退期)の人生から、マルチステージの人生へとライフシフトしていくことが求められています。

マルチステージの人生は、職業人生を長期化し、キャリアを流動化させていくものになります。

ジョブ型雇用の導入、AI化による人員削減、インフレによる実質賃金の低迷の中、これまでのようなサラリーマンを続けることに悩んでいる人も多いことでしょう。

特に40代以上のサラリーマンにとっては、今後の職業人生をどのように生きていくか、考える時期にきている方も多いのではないでしょうか。

どのようなライフシフトをしていくか、考える切っ掛けになれば幸いです。

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