前回までに、投資信託での運用は、インデックスファンドに長期・積立で投資していくことが重要であることを書いてきました。
この長期・積立で投資していく手法としては、国の制度である「つみたてNISA」が最も適しています。
NISA制度は、非常に分かりにくく使い勝手が悪かったのですが、政府が本腰を入れて改正に取り組みました。
2022年12月16日に政府から2023年度の税制改正大綱が発表され、その中でNISA改正案も盛り込まれました。
2024年1月から改正される方向で固まり、これまでの多くの批判の声を踏まえた改正となったことで、改正後の新NISAは使いやすい制度となっています。
政府が制度を整えたので、今度は私たちがこの制度を上手に活用して、豊かになっていく番です。
今日は、あらためてNISA制度のメリットを確認したうえで、今回のNISA改正案について整理します。
NISA制度のメリット・デメリット
投資信託などの運用商品は、売却したときに収益が出た場合にはその収益に対して課税されます。
また、分配金や配当などの果実についても特別分配金でなければ課税されます。
特別分配金というのは、基準価額が購入時より下がっているのに分配金が出ている場合の分配金のことです。
つまり、儲かってないのに投資元本を取り崩している場合のことであり、そうした場合を除いています。
このように、儲かっている場合には、その収益分に対して、20.315%の課税がなされます。
NISAは、こうした運用によって得た収益にかかる税金が非課税となるというものです。
つまり、儲かった分から税金を引かれずにそのまま受け取ることができるということになります。
20.315%の税金ということは手取りが約8割となるので、これが非課税となって手取り100%になるということは大きなメリットです。
一方で、デメリットとしては、売却した時に損が出た場合に、その損失額をNISA以外の口座での収益と損益通算ができないといったことや、翌年以降に繰り越せないといったことがあります。
通常は、ある口座で損失が出た場合も他の口座で損失が出ていれば損益通算されて、トータルで儲かった分にしか課税されません。
また、トータルで損失があった場合には、翌年以降に損失を繰り越して翌年に収益が出た場合には、その収益をマイナスすることができます。
NISAはこうした損益通算や損失の繰越ができないのですが、そもそもNISA口座だけで運用していれば課税されるものがないのでデメリットとも言えないかもしれません。
つみたてNISAは商品が厳選されている
現行のNISAですが「一般NISA」と「つみたてNISA」に分かれています。
詳細は、以下リンクの金融庁のホームページで確認できます。
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/index.html
簡単に概要を申し上げると、「一般NISA」は、非課税となる期間が5年、年間の非課税枠が120万円となります。
対象商品は、投資信託の他にも上場株式やREIT(不動産投資信託)も対象になります。
これに対して「つみたてNISA」は、買い付け方法が毎月の積立による買い付けとなり、非課税となる期間が20年、年間の非課税枠が40万円となります。
対象商品は、金融庁が厳選した投資信託かETF(上場投資信託)だけに絞られています。
これらの投資信託は、長期・積立に適した商品として金融庁が認める投資信託です。
具体的には、購入時手数料は0(ノーロード)のものに限られており、信託報酬も一定の水準以下という条件がついています。
また、複利の効果を高め、元本の取り崩しとなるようなことがないように毎月分配型は除外されています。
2022年12月21日現在、公募投資信託が49本、 ETF3本の合計50本の商品が対象になっています。
このように、手数料の低い投資信託を金融庁が厳選して対象としているため、商品選定においても安心してこの中から選べば良いということになります。
2024年1月からのNISA改正案
続いて2024年1月からの改正されるNISAの概要です
まずは、 限定されていた非課税となる期間が無期限となりました。
「つみたてNISA」では、現行20年の非課税となる期間が無期限になります。
「一般NISA」は「成長投資枠」という名前になり、こちらも現行5年の非課税となる期間が無期限となります
今までは、「つみたてNISA」と「一般NISA」を併用して利用することができなかったのですが、「つみたてNISA」と「成長投資枠」は併用して利用することが可能です。
それから、金額が少なすぎるとして悪評だった年間投資枠が拡大します。
「つみたてNISA」の年間投資枠は現行の3倍の120万円。
毎月の積立ですので12で割り切れる金額になったことも、月間の最大投資額が分かりやすくなって良かった点です。
「成長投資枠」の年間投資枠は、現行の2倍の240万円。
「つみたてNISA」と「成長投資枠」は併用して利用することが可能ですので、合わせると年間360万円の非課税投資枠となります。
年間の投資枠は限られていますが、期間が無期限ですので、生涯での投資金額が青天井とならないように生涯投資枠の上限が決められています。
生涯投資枠の上限は1,800万円です。この金額は買付時の簿価をカウントすることになっており、また、売却した分は枠の再利用が可能となっています。
つまり、売却金額分の枠が空いて、その金額分をまた買うことができるということになります。
また、この生涯投資枠に現行NISAの投資実績は算入しないとのことです。
これまでに、NISA口座で購入した金額は関係なく、2024年1月以降に1,800万円の生涯投資枠を持つということになります。
まとめ
主なNISA改正の概要は以上の通りですが、期間が無期限になって、年間投資枠も大きくなりました。
「つみたてNISA」と「成長投資枠」の併用が可能となり、生涯投資枠の概念が設けられたことで、非常にわかりやすく利用しやすくなったといえます。
生涯投資枠には、既存NISAの利用分は含まれませんので、2024年の1月まで待たずに、今からでも「つみたてNISA」を利用しておくべきでしょう。
投資は、長期・積立で行うことで成果が出やすくなるものですので、早く始める方が効果がでやすくなります。
また、稼いだ分が再投資されてまた収益を生み出すという複利の効果が、長期になればなるほど効いてきます。
「つみたてNISA」であれば、毎月ドルコスト平均法で買っていくことになりますので開始するタイミングはそれほど関係ありません。
早めに初めて、投資に慣れていった方が良いのではないかと思います。