ライフシフトにつながる話を共有します。
NHK朝ドラの「ちむどんどん」。ネット上では、評判が良くないのですが、私はようやくここに来て面白くなってきたと思っています。
朝ドラ「ちむどんどん」が評判が悪かった理由
このドラマ、主人公の女の子が沖縄から東京に出てきてイタリアンレストランで修行し、沖縄料理の店を出店する話です。高校生の頃に参加した地元のイベントで自分の好きなことは料理であると気付き、その道で生きていくことを決心します。
個性を活かして個人が好きなことで生きていこうとしている私たちも共感できるメッセージが、きっとたくさん出てきて楽しみながら勉強になるはずと期待しました。そう思って見ていたら、肩透かしを食らったように共感できないことばかりなので、ネット上での批判も多くなってしまったのだと思います。
イタリアンレストランでの修行時代もそれほど苦労せずに、何故か屋台や新聞社での社外修行?を経て、厨房の主任格へとなっていきます。また、オーナーは自分の叔母なのですが、優しく時には厳しく指導してくれるのに、その優しさが伝わらなかったり、忠告を聞かなかったりします。沖縄から出てきたときから人間的には成長していないかのように見えてしまいます。ネット上では、ここらへんの苦労して成長する過程が丁寧に描かれていないといった批判が多くありました。
他にも、友人の恋人を奪ってしまう、幼馴染みのプロポーズをあっさりと断ってしまう、(これは本人ではなく妹や周囲が動いたのですが)その幼馴染みを結婚式に無理やり出席させてスピーチさせる、脇役たちのキャラクター設定やエピソードが雑で共感しにくい、昭和の時代に長距離電話をガンガン掛けていてありえないといったように批判される要素がたくさんあり、私もネット上でのそうした批判に同意見でした。
独立して苦労し、成長に共感できるようになってきた
ただ、先々週ぐらいからでしょうか、元同僚の料理人が独立後に苦労して廃業してしまうものの、妻の愛情と支えに気付き、やり直しを誓っていくあたりから私個人的には共感できることが増えてきました。この元同僚の料理人が涙ながらに過去の過ちを謝罪し、大事にしていた包丁を見つめてやり直しを誓うシーンは感動ものでした。
さらにこの元同僚は、主人公が出店した店で働くようになるのですが、口は悪いものの主人公への指摘事項はいちいち的を得ており、納得できるものです。自分の給料と仕事の範囲を明確にして、それ以外の仕事はしないと主人公に伝えたり、店のコンセプトやマーケティングはオーナーである主人公の責任範囲であり自分は関与しない姿勢を明らかにするなど、ごもっともと思うことばかりです。こうした、元同僚の料理人に主人公がオーナーとして鍛えられていく過程は、これまでの主人公やその家族に甘すぎてモヤモヤする展開から、少しずつ主人公の成長を感じる展開となり、共感できるようになってきました。
「強みは弱みでもある」との名言も
先週は、主人公の沖縄料理の店に客足が遠のき、ついに一旦休業することを決断します。そんな主人公を励ます会がイタリアンレストランで開かれます。そこで、帰り際に叔母が主人公に伝えます。「ほとんどの店で強みは弱みでもある」と。経営が上手く行かなくなった理由を暗に示唆するのです。ここで、明確な理由は話さずに自分で考えさせるところがまた良いではないですか。
おそらく、沖縄の食材にはこだわるものの味付けを東京向けにしてしまったことで、沖縄料理の良さを消してしまっていたこと、沖縄の食材にこだわるあまり輸送コストが掛かりすぎていることを気づかせようとしたのです。
これに主人公も応え、考えた末に状況を打開する戦略を打ち出します。自分の強みはイタリアン料理店で修業したことで多くのお客さまに合う柔軟な味付けを可能とするスキルである。ところが、それが一方では弱みともなってしまっていた。これからは素材は沖縄のものではなくても、味付けを丁寧にしていくことで打開していこうとお店の再開を決意するのでした。
コアターゲット層に響く強みを尖らせる
私は、沖縄の味付けというプロダクトの強みを東京では受け入れられない弱みと思って消してしまっていたところ、強みである沖縄の味付けを際立てせる戦略とも解釈しました。
やはり、強みと弱みは表裏一体。一見、強みと思えることでも弱みとなってマイナスに働くこともある。その反対に弱みと思ってコンプレックスになっていたことが、実は一部ではそこを評価してくれる人もいて強みになることもある。個人ビジネスの初期段階では、幅広い層に受け入れられることよりも、一部のコアターゲット層に響くように強みを尖らせて差別化を図ることが重要であることをあらためて考えさせてくれました。
朝ドラの魅力の一つである、主人公の成長への共感。それから成長の過程で出てくる名言がようやく出始めて面白くなってきたという話でした。