為替介入により7円の円高の後、再び円安に
為替相場が大きく動きました。
ドル円は、21日に151円90銭台まで円安ドル高が進みました。
これを受けて、政府と日銀が円買いドル売りの為替介入を実施しました。為替介入後、一時144円台まで一気に7円も円高となりましたが、その後は147円台まで戻しています。
為替介入は9月22日にも実施されましたが、効き目は限定的のようです。日銀が金融緩和を継続している現状では円安圧力が強いということでしょう。
日本の金融緩和政策は世界的なインフレの中で継続可能か
米国は、インフレを抑えるために量的緩和を終了し、利上げと量的引き締めを行って、金融引き締めの状態になっています。欧州も、11年振りに利上げを行い金融引き締め政策に転換しています。
金融緩和を続けているのは主要国では日本だけとなり、円安が進む主因となっています。
バブル崩壊後に利下げが始まり、90年代後半からはゼロ金利政策、2001年からは量的緩和策が始まり、金融緩和政策をもう20年以上も続けています。
あまりにも長い間、こうした金融緩和政策を続けているので、もうそれが当たり前のような感覚となってしまっていますが、そもそもこの金融緩和の目的は何でしょうか。
日銀の役割は物価の安定にあります。バブル後、長く続くデフレからの脱却して安定的に緩やかな物価上昇させることが金融緩和の主目的です。物価が上がることで企業収益が上がり、賃金が上がることで経済成長につながる好循環にすることが狙いです。
ところが、いざ物価が上がり出しても賃金が上がりません。原材料が高止まっていますから企業収益は上がりません。
また、円安で輸出企業の収益が上がるのではないかと思いますが、長年円高に苦しんできた多くの輸出企業が低コストの海外での生産体制に切り替えています。かつてのように円安で輸出企業の収益が上がるような構造ではなくなっているのです。
日本企業の収益状況は、インフレになっても引き続き厳しいままですので、賃金は上がりません。賃金が上がらないまま物価だけが上がれば生活は苦しくなります。
20年以上続けてきた金融緩和政策がコロナ禍による供給不足やウクライナ危機等を原因とする世界的なインフレの状況でもそのまま続けるべきなのかどうかは今一度検証が必要なのでしょうね。
財政悪化も隠す金融緩和政策
今日の日経新聞では、本来財政が悪化すると金利が上がり出す(国債の信用が低くなって価格が下がる)ところ、日本は金融緩和で金利を下げ続けている(国債価格を下げ続けている)ので、財政悪化による金利上昇を抑え込んでいるという趣旨の記事が掲載されていました。
英国の例を見れば、減税政策を打ち出して財政悪化が懸念されれば、金利が急上昇することがあるとわかります。こうした金利上昇による財政悪化への警告は「債券自警団」と呼ばれています。
日本は、長引く金融緩和政策により「債券自警団」の機能が働かなくなっているのかもしれません。
日本の借金は約1,255兆円で年々増え続けています。10月末にまとめる経済対策では真水で財政出動30兆円というような声も聞こえてきます。
日銀の金融緩和政策に変化がある場合は、金利が急上昇するようなこともあるかもしれません。
その時に為替がどう動くか。日米金利差縮小で円高となるのか、信用悪化の日本売りで円安になるのか。長期では後者のような気がします。
日銀の金融政策の動きは良く見ておかないとですね。