金融市場の波乱要因が重なり、価格変動リスクが高まる

株式市場の価格変動リスクが高まっている

金融マーケットが安定していません。大きな価格変動のリスクが高まっていることを感じさせるニュースが次々と入ってきます。

株式マーケットは、13日から乱高下が続いています。NYダウは13日には米消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回る上昇だったことを受けて一旦は下げで始まりましたが、その後大幅上昇となり、827ドル高となりました。

14日は、前日に引き続き上昇で始まり、一時は400ドルに迫る上げ幅となりましたが、この日は一転下げに転じ最終的には403ドル安で引けました。米ミシガン大発表の消費者調査で一年後の物価見通しを示す予想インフレ率が5.1%と高水準になったことを受けてのものです。

恐怖指数と言われるVIX指数(ボラティリティ・インデックス)が高まっています。価格変動リスクが高まっていることを表していて、この指数が高まると大きな価格変動があってもおかしくない状態なので恐怖指数と言われているのです。

米国市場の主要500社の株価を基準にした指数であるS&P500のVIX指数は比較的高まっているとされる30を超える水準が続いています。

債券市場は株式市場以上に先行き不安が高まっている

債券市場は、株式市場にも増して不安定さが高まっています。

債券版の恐怖指数であるMOVE指数は大きく上昇しています。昨年までは50近辺だった指数が、足元では150まで高まっています。

こちらは米国債の先行き価格変動リスクを示す指数です。先行きの価格変動に不安を持つ投資家が多くなると指数が高まるものです。

米国のインフレが収まらず、金利上昇が続き、債券価格の下落が続いています。また、英国債が大きく下落しており、その動きが米国債にも影響しています。

英国政府は、大規模減税を打ち出し財政悪化懸念から国債が売られました。トラス首相が減税策の見直しを打ち出し、英イングランド銀行が国債買い支えもしましたが、債券価格の下落は続いています。

英国30年国債利回りは3%台後半だったものが5%まで上昇しました。足元でも4.8%近辺と高止まりしています。こうした英国債の利回り上昇(価格下落)を受けて保有している年金基金の運用状況が厳しくなっています。

デリバティブを使った運用戦略をとっている年金基金は、国債を担保にデリバティブを駆使して長期運用をしていますが、債券価格が下がると追加担保を入れなくてはならず、保有する債券を更に売らなければならないという悪循環に陥っています。

年金基金の債券投げ売りが債券市場全体に波及し、米国債の価格にも影響を与えていると言われています。

トラス首相は財務相を解任しましたが、こうした英国政府の政策混乱を発端とした年金基金の運営不安はくすぶり続けています。リスクが高まれば世界の金融市場への影響は大きくなりそうです。

米ドル高が新興国経済に与えるリスク

為替は米ドル一強になっています。一方で、新興国は米ドル高の影響を受け、通貨安、インフレに直面しています。新興国の米ドル建て債務は増大しており、新興国の経済状況が悪化することによる債務の返済不履行リスクが高まります。

13日まで、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開催されましたが、米ドル高が世界経済に与える影響について問題意識を各国ともに持っていながらも共同声明をまとめられずに終わりました。

何ら対策が打ち出されることもなく、G20の機能不全があらためて露呈した格好です。

米国経済も決して好調なわけではない

債券市場の不安定さ、新興国の債務リスクが顕在化した場合、世界経済へ与える打撃が大きくなると思われます。

また、米国経済自体も、決して好調なわけではありません。

14日に米国大手金融機関の決算発表がありました。米銀最大手のJPモルガン・チェースは、景気の先行き不透明感から融資の焦げ付きに備える貸し倒れ引当金を増加しています。

ジェイミー・ダイモンCEOは、米景気について、「目の前に強い逆風が吹いている」と述べています。

CEOは、10日のニュース番組のインタビューで「米国や世界は今から6~9か月後にある種の景気後退に追い込まれる可能性がある」と語っています。

インフレ、金利上昇、ウクライナ危機などが重なるこの状況を「非常に深刻な事態」と言っています。

株式市場や債券市場の価格変動リスクが高まり、不透明な状況です。英国の政策混乱がリスクを高めています。

米ドル高は新興国経済の悪化リスクをはらんでいますが、利害が複雑に絡み合った現代の世界で対策は困難を極めます。

米国でも大手銀行が景気後退に備える動きを取っています。更にロシアのウクライナ攻撃は混迷を深めています。

株式市場は、年初より大きく下がっていますが、まだ下がるリスクがありそうです。大きな下落があったときには、株やETF(上場投資信託)などのリスク資産を割安で買えるチャンスですので、待機して身構えておきたいですね。