前回は投資信託の手数料について書きました。
その中で信託報酬は信託財産から日々、引かれていると説明しました。
信託財産から引かれるというのが、わかりにくいところもあるかもしれませんので、今日は投資信託の仕組みについて詳しくお話ししたいと思います。
信託銀行にお金を集めて管理する
投資信託は投資家からお金を集めて運用のプロでおる運用会社が運用します。
販売会社は投資家から集めたお金を信託銀行に預けます。
預けられた資金は分別保管と言って販売会社や運用会社の資産とは別に保管されています。
これが信託財産です。信託財産は、販売会社や運用会社の倒産からは隔離されていると言えます。
この集まったお金に関して、運用会社が運用の指図を信託銀行にします。
信託銀行は運用会社からの指図を受けて株式や債券などの投資商品の売買を行います。
株式や債券の時価変動や配当金や利金によって、信託銀行に集まったお金の総額が日々変動します。
純資産総額は推移も確認
その投資家から集めたお金から信託報酬などの必要な経費を引いたものが純資産総額となります。
この純資産総額を投資家が保有している口数に応じて投資家に分配するのです。
したがって、純資産総額は信託報酬が引かれた後のものですので、信託報酬が高いと純資産総額が増えていきません。
投資家に分配される金額も増えないということになります。
純資産総額の推移は説明資料等に記載されています。
この推移を見ることでこの投資信託にお金が集まっているのかあるいわ解約が多いのかの傾向が分かりますがわかります
純資産総額が減っているものは、分配金を多く出している可能性もあります。
但し、そうでなければ投資した商品の価格が下がっていたり、解約が多くなっていたりする場合が多いので要注意です。
また、純資産総額が小さすぎると運用する資金が小さいということになります。
十分な分散投資が出来ない場合や、固定コストの影響が相対的に大きくなる可能性があります。
公表されている基準価額の意味
純資産総額を口数で割ったものが一口当たりの価格になります。
新聞やインターネット上で日々公表されていて、取引の際の価格となる基準価額は、1万口当たりの価格です。
数式で表すと、基準価額=純資産総額÷総口数×10,000 となります。
ここまでの説明でお分かりのように運用が上手くいっている場合は、純資産総額が増えますので基準価額も上がります。
反対に運用が上手くいっていない場合は、純資産総額が増えませんので基準価額は下がります。
また、信託報酬が高い場合は純資産総額が増えませんので基準価額も上がりません。
分配金は純資産総額から支払われる
投資信託には、純資産額から一定期間ごとに分配金として、投資家に資金を分配する仕組みがあります。
一口あたりの分配金があらかじめ定められていて、口数に応じて投資家に分配されます。
例えば、毎月分配型と言って毎月一定額を分配する投資信託があります。
ここで注意したいのはこの分配金は決して運用収益ではないということです。
運用成績によっては、この一口あたりの分配金額は見直されるのですが、しばらく一定の額で保たれている場合があります。
その時に、運用が上手くいかずに純資産総額が増えていない場合も決められた分配金は支払われます。
分配金が支払われた場合は、その分の純資産総額が減ります。
運用で純資産総額が増えていないのに分配金が支払われるということは自分が預けた投資資金が戻ってきていることを意味します。
利益が出てるわけではなく、投資元本を払い戻しているだけなのです。
このような現象は、タコが自分で自分の足を食べている様子に例えられてタコ足とも呼ばれます。
このように分配金を収益として考えてしまうことが多いのですが、実は純資産総額の一部が配分されているだけです。
投資信託の運用成績を確認する場合には、受け取った分配金額と純資産額(保有口数×基準価額)のトータルで投資したときから増えているかどうかを見ていかなければなりません。
分配金の予定金額が大きい投資信託がパフォーマンスが良い投資信託だと思いがちですが、決してそんなことはないので注意してください。
分配金は再投資を選ぶこともできます。あるいは分配金なしの投資信託もあります。
運用を長期で考えていて、毎月、一定の金額を受け取る必要がなければ、分配金は再投資をした方が投資効率が良くなります。
分配金が運用に回り、その分で収益を生み出すことが出来れば、複利の効果が得られます。
長期投資では、分配金は再投資あるいは分配なしの投資信託を選んで、複利で運用して行くことが効率的です。
まとめ
今日は、投資信託の仕組みについて書きました。
信託銀行に預けた資金が運用によって増減します。そこから、信託報酬などの必要なコストを引いたものが純資産総額になります。
純資産総額は、保有する口数に応じて投資家に配分されます。純資産総額を総口数で割った価格の1万口分が基準価額となります。
純資産総額の推移は、説明資料等で確認でき、減っている投資信託は、運用が上手くいっていないか解約が増えてきている可能性があるので要注意です。
また、分配金は必ずしも収益ではなく、純資産総額から払われるものです。分配金を受け取っても運用が上手くいっていない場合もあるので要注意です。
長期運用で一定の金額を受け取る必要がなければ、複利効果を得るため分配金再投資がお勧めです。
以上、今回は投資信託の仕組みについて説明しました。次回は、リスクの種類について説明したいと思います。