お金に換算できない無形資産を築いて幸せにライフシフトする

健康寿命の長期化やAI化など、私たちを取り巻く環境は大きく変化しています。

こうした人生100年時代を、幸せに生きるためには、ライフシフトの考え方を持つことが重要です。

それは、従来型の3ステージ(学習期・就業期・引退期)が固定化されたモデルの人生から、複数のキャリアを積んで、柔軟に生きていくマルチステージのモデルにシフトしていく考え方です。

ライフシフトするためには、長期に渡って充実した働き方をすることが大事になります。

まずは、お金の心配をなくすことが大事であり、貯蓄や不動産などの資産を確保することももちろん重要です。

しかし、長期にわたって幸せな人生を生きていくということは、お金だけではなく、もっと目に見えないものが与える要素が大きくなります。

リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット共著『LIFE SHIFT 人生100年時代の人生戦略』(2014年、東洋経済新報社)では、より幸福なライフシフトには、お金だけではなく、「見えない資産」を形成していくことが重要だと書かれています。

今日は、このお金に換算できない「見えない資産」とは、どういったものかを整理してみましょう。

お金に換算できない「見えない資産」

お金や仕事は大切なものですが、人生の幸福度はそれだけでは測ることができないと思います。

家族との良好な関係や素晴らしい友人に恵まれていること、豊富な知識を持っていること、心も身体も健康であること。

そうした要素が、人生の幸福度を高めるものであるということは、誰もが納得できるのではないでしょうか。

こうしたお金では換算できない無形の資産は、働く期間を長くし、収入を稼ぐためにも重要な役割を果たすものでもあります。

無形資産はお金や株式、不動産などの有形資産と完全に切り離せるものではありません。

それぞれが補完しあい、強力な有形資産が無形資産を強固にし、強力な無形資産がまた有形資産を増やすことにつながります。

無形資産はそれ自体が大きな価値があることに加えて、有形資産を形成する大きな力になります。

このように、有形資産と無形資産をバランス良く持つことが、長く生産的な人生を幸福感の高いものとするために、重要な鍵を握る要素なのです。

こうした無形資産には、さまざまなものがありますが、大きく分けて三つのカテゴリーに分類することができます。

  1. スキルや知識などの「生産性資産」
  2. 健康、家族や友人との絆などの「活力資産」
  3. 変身を遂げるための「変身資産」

それでは、それぞれ詳しく見ていきましょう。

➊スキルや知識などの「生産性資産」

まず、一つ目は「生産性資産」です。

主な構成要素は、仕事の生産性を高め、稼ぐためのスキルや知識になります。

長い期間働いて、生産的な人生を送るためには、スキルと知識への投資が不可欠なものになります。

投資分野は、自分が情熱を燃やせて、強い興味を持てるものであることが条件になります。

そして、有益な価値に対する需要があり、希少性があるものであれば、より稼ぐ力を強めることになることでしょう。

また、ブランドも重要な「生産性資産」です。

高い信頼を得て、良い評判を確立することでブランドは構築されます。

価値あるスキルや知識がブランド化されて、生産性を発揮することにつながります。

評判は長い時間をかけて、信頼を重ねて形成されるものであり、一朝一夕にできるものではありません。

有益な発信を継続するなど、信頼を得る活動を続けることで、自分ブランドを創っていくことが大切だと考えます。

➋健康、家族や友人との絆などの「活力資産」

二つ目の無形資産は「活力資産」です。

この「活力資産」は、明日への活力となって生産力を高めるものです。

健康な心と身体を維持することや家族との良好な関係、良い友人に恵まれていることなどが構想要素になります。

これらが乏しくなると、働いて稼ぐことにも影響を与えます。

お金に換算できる資産を稼ぐためにも、こうした「活力資産」を育てていくことは欠かせないことなのです。

人生100年時代には、こうした「活力資産」の維持に重点を置くことがとても重要なことになります。

従来の3ステージの人生では限界がある理由は、この点にあります。

これまでの3ステージの人生では、勤労期間に、過酷な長時間労働を強いられ、健康を消耗するケースが多くありました。

また、家事や子供の世話を、家庭の中で女性が一手に引き受けるなど、家族との良好な関係の点でバランスを欠いたものでした。

このように、3ステージの人生では軽視されていた「活力資産」ですが、後半人生が長くなる人生100年時代では、長い期間働いて、家族と暮らす時間も長くなるため、大切に育てる必要があります。

➌変身を遂げるための「変身資産」

ライフシフトするために重要な無形資産の3つ目は、「変身資産」になります。

人生を変化させるために必要な力であり、最も重要なものと言っても過言ではありません。

変化への不安やリスクへ対処する能力だったり、自分についてよく知っていることや、多様なネットワークをもっていること、また、新しい経験に対して開かれた姿勢を持っていることなどがその要素になります。

自分を知っていることは、自分にあった望ましい変化をするために力を発揮します。

自分についての知識は、変化しながらも自分らしさを保つことに役立つのです。

キャリアチェンジしても、変わらない自分の要素は何か、譲れない価値観はどういったものか、過去に起きた事象との因果関係はどのようなものであったか。

こうした自分への理解が、自分にあった道を選ぶことにつながります。

多様性に富んだ人的ネットワークも変化を支える重要な要素です。

ロールモデルになる人や自分と同じようなライフシフトをしている人との交流が大事なものになります。

こうした人たちと新しいネットワークを築くことで、新しい価値観に触れることができて、変化を促進します。

コミュニティやサロンに入るなど、同じ世界を目指す人たちと積極的に触れ合うことで、環境を変えていくことができます。

新しい経験に対して開かれた姿勢を持つことは、変化する際には必須なものです。

変化をもたらすのは、実際の行動になります。

大胆な解決策を受け入れる姿勢、古い常識に疑問を投げかける姿勢、画一的な生き方ではなく、新しい生き方にチャレンジする姿勢、新しいが故の曖昧さを嫌わない姿勢など。

こうした姿勢が、変化する行動に結びついていくのです。

この変化を恐れない開かれた姿勢は何よりも重要なものだと考えます。

生存していくために、人間は本能的に変化を恐れ、安定を望むものです。

しかしながら、この人間が本能的に持っている現状維持機能に打ち克って、変化をしていくことで、この環境変化の激しい時代を幸せに生きることにつなげることができるのではないでしょうか。

変化した際に生じるリスクは、恐ろしいものですが、例えば、いきなり起業を始めるのではなく、副業から始めて起業の準備をする、投資をコツコツと積立式で行うなど、リスクを抑えるやり方はあります。

リスクを抑えながら、恐れずに少しずつ変化していくことが肝要です。

まとめ

ライフシフトをしていく際には、お金や株式、不動産等の目に見える資産の他に、見えない資産が重要な役割を果たします。

幸せなシフトをしてくためには、こうした無形資産を築き上げていくことが大事です。

そして、これら無形資産は、有形資産を築くことにも役立ち、また、有形資産が無形資産を育む側面もあります。

従って、有形資産と無形資産とをバランス良く保有することが、人生の幸福感を高めることになります。

こうしたお金に換算できない無形資産は、大きく分けて3つに分類されます。

➊スキルや知識などの「生産性資産」、➋健康、家族や友人との絆などの「活力資産」、そして、➌変身を遂げるための「変身資産」です。

とりわけ「変身資産」は、変化していくうえで大変重要なものです。

自分をよく知っていること、ネットワークを持っていること、そして何よりも大事なのはリスクを恐れずに変化に対して開かれた姿勢を持っていることです。

変化に対するリスクを抑えながら、毎日少しずつシフトしていき、幸福な人生を送りましょう。