米国雇用統計は強弱入り混じった内容
米労働省が4日発表した10月の雇用統計は強弱入り混じった内容でした。
非農業部門雇用者数は前年同月比約26万人増と約20万人増を予測した市場予想を上回りました。
一方で、失業率は3.7%と前月より0.2%上昇しています。依然として4%を下回る低水準ではあるものの失業がやや増えてきた兆しかもしれません。
米国企業は、人員削減を進めているというニュースが多く入ってきます。今後、失業率は悪化していくかもしれません。
米国民間調査会社の調査によれば、米国企業の10月の人員削減計画は前月比13%増、前年同月比48%増となっています。
アマゾン・ドット・コムは今後数ヶ月の採用凍結を発表しました。
ライドシェア大手のリフトは22年末までの採用凍結と従業員の13%の人員削減を発表、オンライン決済大手のストライプは従業員の14%の人員削減を発表しています。
景気後退への懸念が強まる中で、企業の人件費削減の動きが出てきているようです。
米サプライマネジメント協会が発表した10月のサービス業の景況感指数は前月から2.3ポイント低下。悪化は2ヶ月連続で、コロナ禍の初期段階の2020年5月の水準まで低下しています。
今後の景況感悪化により更に人員削減の動きが強まるかもしれません。
FRBは雇用に着目している
米国の中央銀行にあたる連邦準備理事会(FRB)は2日のFOMCで4会合連続の0.75%利上げを決定しました。
急ピッチな利上げが経済に深刻な影響を与えないように意識するコメントもあり、次回以降は、利上げのペースが緩やかになることを示唆しました。
一方で、最終的な金利到達点の高さについて、これまでの見通しよりも高くなるとのコメントや利上げペースはおそくなるが長期間続くとのコメントがありました。
FRBがインフレ懸念はまだ強く、金融引き締めに強い態度であることが示されました。
こうしたFRBのタカ派的姿勢は、雇用がまだ強いことが根拠になっています。「雇用の増加は堅調で、失業率は低水準にとどまっている」ことを大幅利上げの理由として説明しています。
失業率の上昇や人員削減等の動きは今後の雇用悪化の兆候ですので、FRBの姿勢にも変化が出てくるかもしれません。
株価は一進一退
株価はそうした思惑から一進一退の方向感を欠く展開でした。
4日のNYダウは前日比401ドル高の3万2,403ドルと最終的には上げたものの、一時は600ドル超上げた株価が急速に下げ、最終的には上げるという乱高下でした。
雇用統計が強弱入り混じった内容だったため、市場の見方も揺れているようてす。
市場は利上げペースが緩まることを期待する一方でFRBの金融引き締めへの強い姿勢を一段と警戒する向きもあります。
今後も市場とFRBの綱引きは続きそうです。
次に注目されるのは、10日発表の10月の米消費者物価指数です。物価上昇率が引き続き高いものかどうかに着目です。