政府は資産所得倍増プランの中で、個人の資産形成アドバイスを行うことのできる中立的な仕組みの創設に動いています。
私たちの投資行動にどのような影響を与えるか考察してみました。
金融機関ではなく中立的な立場からアドバイスを受けられるようになる
国民全体の金融リテラシーを高めていき、貯蓄から投資へのシフトを加速させる目的で、令和6年中に金融経済教育推進機構(仮称)を設置するとのことです。
そして、金融機関ではなく中立的な立場でライフプランや銘柄推奨を具体的に行うことができるアドバイザーの認定やアドバイザーが継続的に質の高いサービスを提供できるようにする支援を行うとのことです。
現在のファイナンシャルプランナー(FP)がこのアドバイザーに近いのですが、投資に関する具体的な助言は投資助言業となり登録が必要です。
つみたてNISAやiDeCoの投資可能商品に限定して助言ができるように投資助言業の登録要件を緩和する法改正を検討していくとされています。
これによって、これまで主に銀行や証券会社などの金融機関からしか、投資に関する具体的なアドバイスをもらえなかった個人が、中立的な専門家に相談できるようになります。
中立的な立場であれば、多額の手数料を金融機関に取られることもなく投資を検討することができるようになります。
また、金融機関に都合の良い商品を勧められることもなくなるでしょう。
中立的な認定アドバイザー創設によって変わること
実際に、こうした中立的なアドバイザーが設置されることで起こる変化を考えてみました。
金融機関は超富裕層に絞ったビジネススタイルになっていく
金融機関は、手数料を稼ぐことがますます難しくなってきます。
商品の手数料ではなく、残高手数料で稼ぐようになりますので残高を多く預けてくれる超富裕層に顧客は限定されてくるでしょう。
また、大口の株式売却等、特別なサービスを提供することで収益を稼ぐことになってきますので、上場企業の大株主などの超富裕層顧客にフォーカスしていきます。
中間層は、これまでも金融機関から満足なアドバイスを受けることが難しかったと思いますが、ますますアドバイスは受けにくくなってくるでしょう。
中間層は中立的なアドバイザーに気軽に相談できるようになる
一方で、国の施策として新設される中立的なアドバイス機能が中間層にとっての相談先になっていくでしょう。
これらのアドバイザーが企業や自治体の中にいて、身近で気軽に相談できるようになることを政府も意識しているようです。
資産所得倍増プランの中では、雇用者に対する資産形成の強化について記載されています。
企業における雇用者の資産形成を支援する取り組みは、雇用者の満足度向上や定着率の向上に効果があるとしています。
そのため、職域における中立的な認定アドバイザーを活用する取り組みを企業に促すとのことです。
また、金融審議会のワーキンググループでは、地方自治体や民間企業がつみたてNISA等の普及や利用促進を図るため職域・社員向けセミナーを開催するなど、身近な場所での資産形成のフォローについても触れています。
新設される認定アドバイザーの収益は?
相談の手数料負担が増えてしまっては本末転倒ですが、アドバイザーの収益が少ないとアドバイスの質が保てなくなる懸念があります。
アドバイザーが、ビジネスとして成り立つように育成していく観点からも施策を検討すべきであることも資産所得倍増プランの中では触れられています。
企業が雇用者に中立的な認定アドバイザーの活用を促す際に、助成を行うことも検討されるようです。
専門家のアドバイス内容に独立性は保たれるか?
中立的な認定アドバイザーのアドバイス内容が、政府色が濃くなりすぎてしまわないかどうかは注意しておいた方が良さそうですね。
中立的と言いながら、政府の政策を推進するために決められたアドバイスしかできないと、個別の目的やニーズに合わない場合もあるかもしれません。
自分に合ったアドバイザーを選別できるような仕組みも必要ではないでしょうか。
ライフプラン全体についてのアドバイスもできる専門家が求められる
資産運用だけではなく、副業や不動産、年金などライフプラン全般についてアドバイスできるような専門家が求められるようになるでしょう。
私も、こうしたアドバイスにつながるような情報発信を通じて、ライフシフトしていける人が増えるように社会貢献していきたいと思います。