個人投資家はパッシブ型運用を行う投資信託(インデックス・ファンド)に投資する

前回、一般的な個人投資家の投資は、投資信託を活用して長期・分散で行うという話をしました。

投資信託を活用することは理解したが、どんな投資信託を選べば良いかが分からない場合が多いと思います。

不特定多数の投資家に向けて募集する公募投資信託は、約5,900本あります(2022年10月末、一般社団法人投資信託協会の資料より)。

公募に対して少人数の適格機関投資家など特定の投資家に向けて募集する私募の投資信託もありますが、個人投資家が投資するのは主に公募投資信託ですので、ここでは公募に絞ってお話をします。

約5,900本もの投資信託があるとなると、確かにその中からどの投資信託を選べば良いかはわからないですね。

しかし、投資信託もタイプによって分けられますので、買うべき投資信託は限定されてきます。

今日からは、買うべき投資信託のタイプがわかるように投資信託について詳しく書いていきます。

パッシブ型運用とアクティブ型運用

投資信託の運用手法は大きく分けて二つあります。パッシブ型とアクティブ型の二つです。

パッシブ型運用

パッシブ型は、市場が効率的であるとして、市場と同じパフォーマンスを目指す運用手法です。

市場で成立している価格を受け入れる受動的な運用になります。

例えば、日本の株式であれば、東京証券取引所に上場されている銘柄のすべてをそれぞれの時価総額の比率に等しい割合で保有するというような運用手法です。

より実務的には、市場全体の銘柄の価格を表す指数(インデックス)と呼ばれる指標が用いられます。

パッシブ型運用では、指数と連動したパフォーマンスを目指す運用を行います。

代表的な指数には、日本の株式であれば、日経225(日経平均株価)やTOPIX(東証株価指数)、米国の株式であれば、ダウ工業株30種(ニューヨーク・ダウ)やS&P500種指数(S&P500 )などがあります。

これらの指数の動きはニュースでも良く取り上げられますので、価格の動きやリスクは捉えやすいと思います。

運用者の主観が入らないため、銘柄選定にコストがかからず、パッシブ型投資信託の手数料は安くなります。

アクティブ型運用

これに対して、アクティブ型は、市場は完全に効率的ではなく、常に割高や割安な証券が存在していると信じて、市場よりも優れたパフォーマンスを目指す運用手法です。

実務的には、市場の指数と比較して割安と判断した商品やセクターのウェイトを高め、割高と判断した商品やセクターのウェイトを下げるといったような運用手法になります

市場よりも高い運用成績を目指して、独自の運用手法を用いますので、高給のファンドマネージャーを雇うなどコストがかかります。従って、アクティブ型投資信託の手数料は高くなります。

このようにアクティブ型の方が手数料が高くなりますので、運用成績が手数料を大きく上回らないと投資信託のパフォーマンスも良くなりません。

実際には、手数料を加味したトータルリターンでパッシブ型投資信託よりも高い運用成績をあげているアクティブ型の投資信託は少ないと思われます。

アクティブ型投資信託に関する金融庁のレポート

https://www.fsa.go.jp/news/r3/sonota/20220527/20220527.html

金融庁が2022年5月に公表した「資産運用業高度化プログレスレポート2022」によれば、2022年3月末の日本株に投資するアクティブファンド444本の内、約半数の219本がパッシブ運用よりもパフォーマンスが悪かったとされています。

しかも、この統計は、購入時にかかる手数料を考慮していません。購入時手数料も考慮すれば、もっと多くのアクティブ型投資信託がパッシブ型投資信託よりもパフォーマンスが悪かったのではないかと思われます。

詳しくは別の回に書きますが、手数料には購入時にかかる手数料と保有している間、毎日かかる信託報酬があります。

実態として、購入時の手数料を埋め合わせるのに、何年もかかってしまうアクティブ型投資信託は多いです。

また、この金融庁のレポートによれば、パッシブ型を上回る成果を上げている投資信託は独立系の運用会社が多く、成果が下回っている投資信託の8割が大手金融機関系の運用会社であるとのことです。

こうした大手金融機関は、販売しやすいテーマに特化したアクティブ型投資信託を設定します。わかりやすい例では、AI関連企業の株式に投資するものや環境に配慮した企業の株式に投資するものです。

こうしたテーマ型は、販売することを重視しているため、販売するときには運用成果がピークであることが多いです。世の中で話題になってから商品組成して販売するので、どうしてもタイミングが遅くなり、旬を過ぎてしまいます。

リスクがわかりにくいアクティブ型投資信託

また、アクティブ型投資信託の特徴として、投資している銘柄の詳細が、説明資料には十分に開示されておらずにリスクがわかりにくいということがあります。

ファンドマネージャーが独自の運用していますので、ある程度の運用のテーマや方向性は説明資料に書いてあるものの、具体的な個別の銘柄は上位のものしか表示されていない場合も多く、どんな銘柄が入っているのかわからないことがあります。

その独自の運用が、上手く予想通りになれば、とても優れたパフォーマンスとなることもあります。

一方で、突然にパフォーマンスが悪くなったり、市場は上がっているのにこの投資信託だけ成績が悪いというようなことがよく起こります。

独自の銘柄の内、一部の銘柄で予想が外れてしまう場合があるためです。

また、複雑なデリバティブを駆使している場合などは、投資信託のパフォーマンスは、もはや市場の動きでは説明ができません。

おそらく、販売している銀行や証券会社の営業マンもどうして、こういう価格の動きになったかよくわからないという場合も多いのではないでしょうか。

このようにアクティブ型の投資信託は価格の動きやリスクがとても分かりにくいです。

しかも手数料が高いためインデックス型の投資信託と比べて、手数料を加味したパフォーマンスは決して良いわけではありません。

まとめ

投資信託の運用手法には、パッシブ型とアクティブ型があります。

パッシブ型は、市場の指数(インデックス)に連動する運用手法です。これに対して、アクティブ型は市場の指数を上回ることを目指して独自に運用する手法です。

アクティブ型の方が手数料が高い一方で、手数料を上回るような成果を出してパッシブ型よりも良いパフォーマンスとなっている投資信託が明確に多いわけではありません。

むしろ、金融庁のレポートによれば、手数料考慮前でも、約半数のアクティブ型がパッシブ型よりも成果が低い結果になっています。

高い手数料を考慮すれば、半数以上のアクティブ型投資信託がパッシブ型投資信託を下回っていると思われます。

また、アクティブ型はリスクがわかりにくい場合も多いので、個人投資家が投資する際にはパッシブ型(インデックス型)に投資するべきでしょう。

次回は投資信託の手数料について書きます。